ステロイドは悪魔の薬なのか

アトピー性皮膚炎に悩まれている方なら一度は使ったことのある薬ではないでしょうか。
私は基本的にロコイド、リンデロン、アンテベートを使用する機会が多くありました。
アンテベートが効かなくなった際に焦り、怖くなり、ステロイドを使用しないでアトピー改善をしようと決心しました。

約6ヶ月は普通に辛くて大変で地獄でした。

一晩だけアンテベートを塗った時があるのですが、次の日に肌がツルッとしたのをみて怖くて継続をやめました。

私はどうして怖いと思ったのでしょうか。

1992年にある女性がステロイドの副作用で顔が赤くなり、「顔を潰された」と訴える内容をテレビの報道番組が特集。番組に出演していたキャスターは「ステロイドは悪魔の薬です」と発言し、これがきっかけで世間で過剰なステロイドバッシングが始まりました。しかし、この女性はアトピー性皮膚炎の患者ではなかった上に、医師の指導を受けずに自己判断で薬の使用をしていたと言うのが真実でした。

この大きな誤解がいまだに続いており、なんとなく怖い原因のひとつになっていると言えます。

そして、ステロイドへの誤解は
・一度使ったらやめることができない
・ひどい副作用がある
・皮膚が黒ずむ
・使用をやめるとリバウンドする
これらもではないでしょうか。

ひとつずつ解説していきます。

「一度使ったらやめることができない」

アトピーは良い状態と悪い状態を何度も繰り返すのが特徴です。
ステロイドは皮膚の炎症を抑えますが、体質そのものが変わらない限り、アトピー改善は厳しいです。
そのため、「ステロイドを塗る→良くなる→ステロイド中止する→アトピー再発→再びステロイド塗る」という、根気のいる治療にもどかしさを感じて「一度使ったらやめることができない」と言う誤解が生まれました。
適切に使えば、使用しなくても良い状態になります。


「ひどい副作用がある」

薬には多少の副作用はつきものです。
そして、SNSにはステロイドに対して恐怖心を煽るような情報が溢れています。


アトピーで使用するステロイドは「外用薬」塗り薬が主です。
内服や注射での全身投与は、感染症や糖尿病、高血圧などのリスクを上昇させるために注意が必要です。
外用薬の場合は、皮膚や粘膜から吸収させる量が全身投与に比べて極端に少ないため、大きな合併症を心配する必要はありません。

ステロイド外用薬の副作用として主に挙げられるのはこれらです。

・毛が濃くなり産毛が目立つ
・毛細血管が拡張して赤みが目立つ
・ニキビができやすくなる
・皮膚が薄くなる

これらの副作用は症状が良くなって、薬の使用量が減り、使用感覚が空けば回復していくものです。
適切に使用していれば大きな問題が起きることはありません。

体の部位でステロイドの吸収率は変わるため、指示された通りに薬を塗ることが重要です。
体用に処方された薬を顔に塗る⭐︎なんてことは絶対にやめましょう。
正しく使えば副作用は抑えられます。


「皮膚が黒ずむ」

これね。
独特の赤黒さと乾燥肌を見て、あの人アトピーだ。ってわかるのよね。

ステロイドの副作用で黒ずむのではなく、本当の原因は炎症を長引かせたことにあります。

ステロイドには炎症を抑えて、黒ずみの原因色素沈着を予防する働きもあります。
そもそも色素沈着とは、皮膚の炎症や衣類の擦れ、マッサージ、掻きむしりなどによって肌に刺激が与えられることで起こります。

アトピーの方は痒みを感じやすく、健康な肌の人よりも掻いて擦ることが多いため、色素沈着が起きやすい状態です。

ステロイドをしっかりと塗って肌の炎症を鎮め、掻き壊しを防ぐことはのちの色素沈着を予防することになります。

「やめるとリバウンドする」

やめるとリバウンドしてさらに悪化するから、ステロイドは使用してはいけない。

これは急に使用を中止した場合にのみ起こります。
こうなる原因は、ステロイドへの不信感が根底にあります。私はそうでした。


いつも塗れば治っていたのに、塗っても治らない!怖い!
自分の治癒力で治すんだ!!よし、やめよう!!

悪化しました。

これに関しては本当に…。
薬の効果はなんら変わっていませんよね。
「私の炎症が悪化したから薬が効かなくなった。」
シンプルなことではありますが、これに気がつくまで時間がかかりました。

相手を変えようとするのではなく、
まずは自分を変えること。
これ世の理(ことわり)なり。

私は当時のSNSの情報を鵜呑みにして
脱ステ(ステロイドを使用しない)方法でアトピー改善に臨みました。

結果的には改善できたのでよかったのですが、
ステロイド外用薬を使用して痒みを抑えたほうが
日常生活をまともに過ごすことが出来たのではないかと思います。

ステロイドはなんとなく怖い。

なんとなく怖いの部分が紐解けて
新しい考え方、新しい選択肢を持つきっかけになっていただけたら嬉しいです。